医食同源|ドジョウは高級魚になってしまった「庶民の強壮食品」

ドジョウは本州、四国、九州の河川、水田、沼などに生息し、「泥」の中に棲んでいるため「土生」や「泥生」が語源とも言われています。魚体がヌルヌルとしているのでウロコがないように見えますが実は小さい円鱗があります。

東京の「駒形どぜう」は有名ですが、ドジョウが一般の料理屋に出されるようになったのは江戸時代の文化元年、浅草の越後屋でドジョウ料理を出したのが始まりとされています。

卵とゴボウがたっぷりと入った柳川鍋は、栄養満点の鶏卵と強精効果のあるゴボウが入っており、滋養強壮作用に優れていますが、日本橋横山町の「柳川」という料理屋で初めて作られたので、この名があります。ちなみに、ドジョウは旧仮名遣いで書くと「ドジヤウ」ですが、四文字のため「死」に通ずるとして「ドゼウ」となったようです。

ドジョウのことを「踊り子」とも言いますが、桶の中に入れたドジョウが水面まで垂直に上がってきては、底に潜っていくという動作を繰り返す様を形容したものです。ドジョウは水面に上がって空気を腸に吸入し、腸の毛細血管より吸収するという呼吸をしているため、この「踊り」が必要なのです。

『本草綱目』に「体を温め、生気を益し、酒をさまし、痔を治し、さらに強精あり」とか、『魚鑑』に「血をととのえ、腎精を益す」などとあるように、昔から強壮食品としてウナギに並ぶほど重用されてきました。

また、産婦が食べると、母乳の出をよくする作用があるとも言われています。神経痛やリウマチの痛みの部分には、ドジョウの皮を貼る民間療法もあったようです。

ドジョウは冬眠するので、冬から春にかけては痩せていて食べても栄養になりません。旨くなるのは、夏の産卵期の前あたりの栄養が回復した頃、脂質は白身魚程度で含有量は少なく、タンパク質、ビタミンA、B1、B2、Dが多く含まれています。

ミネラルも、カルシウム(100g中880mg)はウナギ(同95mg)と比べても抜群に多く、鉄(同4.5mg)もホウレン草(同3.7mg)より多く含有しています。

「土用どぜう」は夏の保健食品として実に重宝で、ウナギに手が出せない庶民の食べ物でしたが、今は品不足で、ウナギよりむしろ高価です。件の柳川鍋の他、蒲焼き、ドジョウ汁にして食べると美味です。

【出典】医者いらずの食べ物事典 石原結實著

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